< 【生きることはコラボレーション】展企画にあたって >
2013年2月に逝去した書家 臼井弘丁。
私たちART FOR LIVESにとって、メンバーの父の死であり、ギャラリー活動の拠点である【ギャラリー門】の会場として自らの住居と職業柄身につけた設営の技術を提供してくれた、同志の死でもありました。
また彼の友人たちには、若き青春の思い出そのものだったり、老いてなお夢を分かち合える戦友でした。
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彼が自身の葬儀にはこれを飾るようにと、遺族に託した最晩年の作品『慈』。
彼の人生で直接的、間接的に経験した“出会い”は、関わった他人の中で様々に開花しました。
その果てに彼が辿り着いた一文字。
微かに震えた筆運び、力の入らない手で擦られたと思われる少し薄めの墨で描かれたこの『慈』を、私たちは彼のデスノートと受けとめました。
その意味を考え遺作展の準備を始める中で、彼がこの世に遺した作品が紙の上のものだけではないことに気づきました。
そこで、時系列に彼の作品を並べるだけでは、臼井弘丁の遺作展にはならない。
生涯を閉じたひとりのアーティストへのリプライズを参加作家がそれぞれの方法で表現し、新たな作品を生み出すことにチャレンジしたい。
そのことを通して、生きるとは一人だけで完結するものではな く、多様な形で出逢う他者との関わりの中で日々新たな意味を創造する“コラボレーション”なのではないか。
こうして『生きることはコラボレーション』展が始まったのです。
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