【こうして『Green Days…緑と活きよう』展は始まった】
〜ART FOR LIVESがはじめて外部のアーティストを迎えてコラボレーションした展覧会。
開催前から始まった、全員参加コラボの様子をお伝えします〜
◇集まって、ミーティングが違いを発展に育む◇
ART FOR LIVESのミッション 「アートは人を活かすもの。アートを媒介として、よりよく生きるための場と機会を提供する」そしてキーワードは「だれでも、日常にアート」。
その言葉の意味を、文字以上のものとして実感させてくれたのは、フラワーアレンジのアーティストでありギャラリー「楪(ゆずりは)」を主宰するminaさんを迎えたコラボ企画展でした。
AFLメンバーとminaさんの初顔合わせは2010年9月。
身近な器に身近な花を活けることから、アートを身近に…というぼんやりしたコンセプトを基に、開催を草花の咲き出す4月、花展(仮称)として、年明け2011年1月から本格的なミーティングを開始しました。
するとすぐに、根本的な問いかけが。
「ただ身近な器や手作り陶器に花を活けるだけなら“生花カルチャーセンターか、手作り市みたい“。それならわざわざART FOR LIVESがやらなくてもよい。ならば、何を来場者に与えられるのか?」
そこで大きく舵を切ったのは、minaさんの「今回は、生花ではなく多肉植物に絞りたい。どんなものでも花器にできることと、切られて枯れていくのではなく、手許で育っていく植物の楽しさを知ってほしい」という提案。
みんな深く同意して、展覧会タイトルを「Green Days〜緑を飾ろう〜」に変更。
そして展覧会の目的と成果の定義づけを話し合いました。
<目的>
・訪れた人に日常における緑の新しい取り込み方を提案し、“命あるもの”である緑と生活することの楽しさ、快適さを再発見してもらう。
・リユースについて考えるきっかけをつくる。→ゴミにしていたものが花器として甦る。
・この展覧会でみたことを自分でもできるようになってもらう。
<成果>
・来場者が、買って帰ったり自分でやってみることで、その人の生活に今まではなかった緑が存在するようになる。
・自分も飾ってみたいという“意志”を持って、相談に来てくれる。
・捨てるに捨てられなかった食器、道具などが花器として久しぶりに活用される。
続く2月のミーティングでは、メンバーのひとりが愛読していた古いアート雑誌『銀花』に掲載された、南伊豆で休耕田に蓮を植え続ける“徳さん”こと外岡徳三郎さんの言葉がシェアされました。
「花をいける人は他人に伐らせたものを飾るだけじゃ駄目だよ。なくなっちゃうだろ。育てなきゃ。」
そう言いながら、一面に咲いた蓮の花をみんなが見てくれて綺麗だと喜んでくれるのがうれしい、とひたすら蓮田を作り続ける徳さんに、ぜひ実際に会ってこよう、という計画がもちあがり、さらには『奇跡のリンゴ』で有名な木村秋則さんが無農薬栽培で枯れそうになったリンゴの樹一本一本に毎日話しかけた言葉など、それぞれ心に響く植物との関わりを分かち合いました。
そして、それらを来場予定者に伝えるためのDMデザインも重要議題になりました。
「“手作りバザー”のようなものでもなければ、ただの“作品展”でもない、メッセージのある展示であることを伝えたい。命あるものを生かし、癒やし、活かすことを提示したい。」
具体的には、
・器...捨てようと思っていたものを生かしグリーンの器として、活きる。
・家の中に、生き物であるグリーンを取り入れて部屋が活きる。それぞれが活きる。
・「活」→いきる→誰でも日常にアート「Art for lives 」に符号する。
そこから、「活」という漢字→「いきる」をメッセージコンセプトとする案が生まれました。
かくしてART FOR LIVESギャラリー門シリーズの第3回は、
『Green Days・・・緑と活きよう』展
と正式に命名されたのです。
◇個人を超えたところで、予想もつかないことが次々と…◇
2月に入り、ART FOR LIVES 『Green Days・・・緑と活きよう』展チームメンバーに、次々と予想もしない出来事が起こりました。それらはミーティング議事録を通して、メンバー全体の出来事としてシェアされていきました。
まずうれしいこと。なんと、岩手在住で農業にも挑戦中のメンバーが、『奇跡のリンゴ』木村秋則さんご本人に地元の講演会でお会いできたのです。
そして幸いにもお話しする機会があり、当時最新刊『すべては宇宙の采配』のまえがきの言葉を、展覧会で使わせていただく許可を木村さんから直接頂くことが出来ました。
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地中には、表に出ている作物の、少なくとも2倍以上の長さの根が張っています。
土の中には2倍以上の世界があるのです。
大事なことは、目に見えない部分にあります。
あなたの表に出ていない、自分自身の土壌と根は
どうなっているでしょうか?
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しかも、AFLの緑をテーマにした展覧会の企画をとても喜んで下さり、開催に寄せてメッセージまで下さったのです。
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「毎日がアートです!毎日がドラマです!」
「壁にぶちあたっても、それを乗り越えていってください。
壁に当たった事がない人は、小さな壁も乗り越えられない。
どんどん壁にぶちあたってください。
そしてそれを乗り越えていってください。」
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そしてもうひとつは、メンバーのひとりが突然の心臓手術を宣告されたこと。
手術の予定は、3月末。この出来事は、ミーティングの中で本人からチームメンバーへ報告されました。
「こういうことになって、木村さんの言葉がすごく身にしみてくる。人間も生き物だよね。大事なことは目に見えないところにあるのに、皆目に見えるところを追いかけている。もったいないね・・・」
この実感が、『Green Days・・・緑と活きよう』展をより深く“いのち”へ向かうものとして、メンバーの深いところで共有されたのです。
◇そして震災が……◇
折しも、メンバーの心臓手術前に…と南伊豆視察旅行の予約を済ませ、4月の開催に向けてDMデザインを詰めていた3月11日。あの東北大震災が発生しました。
岩手県在住のAFLメンバーも、直接の被害はなかったものの音信が途絶える期間があり、minaさんは被災地に近い茨城県・古河。議事録のやりとりはしばらく安否確認や支援物資の情報にとってかわり、否が応でも伊豆旅行はおろか展覧会開
催も見直さなければいけない状況になりました
。
けれど、交通機関が不安定な中で可能な限りメンバーは集まって、ミーティングを続けました。
そしてまず、開催期間を当初の4月から延期し、5月15日から22日と変更することを決定。
そして具体的な展示の内容などを具体的に決め始めました。
この作業では、メンバーそれぞれの中に持っていたイメージを目に見える形で出し合い、お互いの相違を認識し、違うものを一つの方向に摺り合わせるというストレスのかかる段階を通ることになります。
けれど、それこそがチームの醍醐味。
AFLのモットーで“弱さを絆に”で有名な『べてるの家』から学んだ“三度の飯よりミーティング”の出番です。
minaさんからは「深いテーマだけど、重たくしないで“楽しさ”のある展示にしたい」「自分の展示なのか、AFL展覧会のゲストとしての展示なのかの位置づけがあいまいな気がする」という“お題”が出され、とことん話し合った結果をまとめて、議事録で共有しました。
また、コンペ形式にしたDMのデザインも、4通りあれば全員一致はまずあり得ません。
票が分かれたその違いを、どちらがよいかではなく、ナゼそう思うのか、を話し合うことで埋めていく。
その作業を通して、この展覧会のテーマをさらに深くメンバーそれぞれで咀嚼し、共有する目標に対して何が一番良いのか…という選択を、積み重ねていきました。
気がつけば、この課程こそこの展覧会が与えてくれた大きな財産。
一人では決して得られない成長の醍醐味そのものでした。
◇準備、完了◇
協議の結果、DMのデザインは「ハッキリ答えが見えちゃうものではなく、これ何だろう?という期待感で男性にも興味を持ってもらえる面白さ」でminaさんの作品/ギャラリー門と多肉植物が大行進している合成写真を使用。
紙には"いのちにいいアート/AFLのDM"の定番となったケナフ100%素材を使用し、今回のテーマ「植物・命を考える」メッセージをさらにプッシュすることに決定しました。
展示はメインアーティストminaさんが空間を自由に使って表現する床の間和室と、AFLチョイスの『アートの森〜古民家の壁をアートの森に』と題した展示スペースに部屋分けし、それを繋ぐ広縁をワークショップとその素材となる“タニクの赤ちゃん”の成長日記を写真と実物でたどる展示空間に。
その全体を、壁にピンで留めたエアプランツなどを効果的に使ってminaさんが統一感を演出しました。
坪庭も、多肉植物の販売スペースとして活用します。
こうして、最初のミーティングから半年を経て、『Green Days…緑と活きよう』展開催
を迎えました。
【『Green Days…緑と活きよう』展】
やむを得ず延期したこの開催日程は、予想もしない副産物をもたらしました。
5月、急な気温の上昇と日照時間によって、植物が最も活発に成長する時期に当たったのです。
生きたものをアートにする…というコンセプト通り、目に見えて成長していく多肉植物たち。
会期初日はこぢんまりと器に入っていた植物が、まるで触覚のように茎を伸ばし、その先端になんと蕾を付け開花する課程を、この8日間で目の当たりにすることになりました。
“再生-re-born”というテーマで、ゴミ捨て場から拾われてきたものを花器に。
水やりは霧吹きでOKなのでどんなものでも器になるのは、多肉植物の大きな魅力。
古い御飯茶碗を使ったランプシェードもminaさんの“再生-re-born”シリーズ。
minaさんが作った白い陶器は、多肉を植え込むとまるで小さな森のようです。
陽の射す広縁には、minaさんの叔母さまで陶芸家の朝倉洋子さんの陶器も。
minaさんの飾った野の花が似合う優しい土の色。
多肉の形のおもしろさを活かして、ミニチュアのラクダを置けばエキゾチックなジオラマに。
こちらはどこかの惑星?
AFLメンバー山口るり『森深く』シリーズ彫金作品。
日本画家臼井明子さんの作品『森』
書家臼井弘丁さんの『草』をモチーフにした創作書道作品はリズミカルで楽しい。
広縁ではminaさんがトレーに挿し芽した多肉の赤ちゃん達が、陽の光を受けて小さな根や芽を伸ばし始めた。
AFLメンバーの作品と一緒に、木村さんの言葉も展示。
一気に上がった気温と晴天が続き、植物たちはどんどん葉から水分を蒸散します。
霧吹きで水をかけてあげるminaさん。
◇WORK SHOP...「タニクと暮らそう」◇
実際に、多肉植物と暮らしてみよう…講師のminaさんがこの日のために挿し芽から育てた多肉植物の“里親”になって、器に植えるワークショップを行いました。
植え込むための器は古食器の中から好きなものを選び、多肉植物のために水はけや根の張り方などを考えてブレンドされた用土を入れて植えていきます。
“植え終わったら完成”ではなく、これからずっと身近に置いて様子を見ながら、乾いたら霧を吹き、日光に当てて光合成させ、育てていく。
来年には一回り大きくなって、いつかは花を咲かせるでしょう。
そしたら新しい器に植え替えたり、株分けや挿し芽で殖やしたり….
そんな多肉植物と一緒に過ごす時間こそ、かけがえのない作品なのかもしれません。
ワークショップで植え終わった"myタニク"と記念撮影。
ワークショップ参加者の作品、ぐい呑みに植えた多肉植物“ハオルチア”。
なんと、水晶のような形の頂部がガラスのように透き通っていて、奧まで光を通して光合成するのだそうだ。
スゴイ、タニク!
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-----そして、今回の来場者コメントご紹介。
「かわいいタニク。増えるように育てます。タニクいっぱいの空間、いいですね」
(女性)
「季節感があって、とてもリフレッシュできました」
(女性)
「緑がとてもすてきで静かな空間にホッとしました。」
(女性)
「“ガンバレ“の言葉をかけるより、命に触れる事の大事さを考えさせてくれる時でした。」
(ワークショップ参加/男性)
「(多肉植物に)こんなにたくさんの種類があるなんて知らなかったし、器と植物のモダンな組合せに、ビックリ。
とてもしゃれた作品群でした」
(男性)
「この空間に合った空気をありがとうございます。」
(ご夫婦連れ/旦那様)
「小さな命の大きさが感じられた、ステキな作品でした。」
(ご夫婦連れ/奧様)
「多肉ちゃんは赤ちゃんみたいでした。」
(女性)
「最高に贅沢な時間を与えていただいて、大変感激いたしました。
是非、またお伺いしてお話しすることがあればと思います。」
(年配の男性)
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◇参加アーティストmina(みな) さん のコメント◇
・ART FOR LIVES【GREEN DAYS ~緑と活きよう~】展
ミーティング〜展示までにあたり
ART FOR LIVES の皆様と出会ったのは、これもまたご縁で親戚にお嫁にきたるりさんがART FOR LIVESの一員でした。
色々な活動をしているのは知っていましたが、こんなにも沢山教えていただく事になるとは。。。
「ART FOR LIVES」の活動のひとつである「ギャラリー門」をオープンする話をきいたのが、調度、私が家族総出おばあちゃんちを改装して、お店を開いて一年程経った頃のことでした。同じような気持ちで、同じような境遇だったな〜と改めて思います。
それまでは思いのままに転職してやりたい事をやってきていましたが、ちょうど自分の使命がみえていたころです。
その「ギャラリー門」の企画として、「花」といえば、、で私を思い浮かべお声かけてくださった事にとてもうれしく、色々な可能性が広がった気持ちを覚えています。
その頃はスッカリ植物へゾッコンでしたが、根本はアートデザインの世界から生きているお花の世界へ突入して始まった今の私には、その始まりが心に響きました。
初めはそんなにミーティングするのか?!と正直、脳内のものが吸い取られるような気持ちもあり、決して余裕のある暮らしではないので、その費やす時間を惜しく思っていました。
しかし、毎回起こるご縁や自分との関わり、広がり、つながり、発見、再確認、自然と命と、、出来事とのリンク、、何回も鳥肌が立ち、涙がでました。
会議の内容はお金でかえるようなものでもなく、沢山のことに気づかせてくれる、展示よりも知っていただきたくなるようなアートそのものだったのです。
自分との対話はいつでも出来ますが、自分を違う角度から見てもらったり、その人の出来事が重なったり、、一人ではできない起こらないことだらけ。。ただ、生きるのではなく少し意識して生きるだけでこんなにも人生広がるんだな〜とちょっと大げさに聴こえるかもしれませんが、そんな風に展示を迎えて行ったのです。
私が多肉植物に興味をもったのは、もう駄目かな。。と思った多肉植物がある時ちいさなちいさな芽を出してくれたところから始まりました。
生きていたのです。
目にみえないどこかで、頑張って生きようとして出てきた芽は、赤ちゃんのように無垢で逞しく、沢山のパワーをいただきました。
その多肉植物を通して、『GREEN DAYSー緑と活きよう』展が「命」「諦めない」「活かす」「生きる」と大きな大きな内容となり、沢山の方の心に響かせることができたのも、ART FOR LIVESの会議と不思議な力のお陰です。
感謝の気持ちでいっぱいです。本当に有り難うございました。
☆minaさん ご紹介
「花・植物」を仕事にしたいと思い立ち「花はどこから来るんだろう?」とまずは花卉市場で荷卸しから始めたminaさんは、強い根を持つタンポポのようであり、春一番に咲く香りよい小さな水仙のようでもあります。
現在は茨城・古河で祖父母の店を改装した植物と陶器、アートのギャラリー「楪(ゆずりは)」を主宰。
Blog:http://kondomina.exblog.jp/
NetShop:http://yuzuriha.shop-pro.jp/