◇まずは徹底的に「三度の飯よりミーティング」
ART FOR LIVESのミッションは 「アートは人を活かすもの。アートを媒介として、よりよく生きるための場と機会を提供する」そしてキーワードは「だれでも、日常にアート」。
これをベースに、企画段階のミーティングでは、
「名作の大規模展覧会には行列を作っても、ギャラリーに足を運んだり作品を買う日本人はごく少数。なぜ?」
この問いから浮かぶ“障壁”をいかに低くするかから始まりました。
「アート作品を買うなんてお金持ちのすることと思われてるかも」
「高いブランドバックは買うのにね」
「自分で選ぶことに自信がない?」
「飾り方も、経験がないと難しいかも」
「子供が一緒だからギャラリーなんて楽しめない、と諦めている人も」
「展示を見るだけでなく、ホッとする時間を過ごせる空間なら」
「アート初心者でも、招かれている…と感じてリラックスできるといい」
「暮らしの気配はあっても、同時に日常を忘れられる空間でないと」
議論を重ね、目指すもを明らかにし、共有するために、「どんな人に、どんなことを、感想アンケートに書いてほしいか」を想像して出し合いました。
初夏の緑の中。具体的な空間作りが始まりました。
◇民家を、暮らしたまま手作りでギャラリーにする
「普通の古い家」を暮らしながら「古民家ギャラリーに」変身させる。奮闘が始まりました。日本家屋ならではの良さを伝えたい…と、ただの通路や物干し場となっている玄関アプローチと庭に玉砂利を敷いて、季節感のある植栽をしたり、改装間もない根津美術館の庭園を散策しながら、竹垣の造作を調べたり。会場となる居間は、日常でありながら美意識を感じさせる空間にするためには、なんと片付けたい物が多いこと!それらを居住人になるべく不便ないよう整理しながら、真夏の太陽の下、汗だくで壁のペンキ塗りやモルタル補修、旺盛に繁茂する雑草取りまで。何もかも手作りの改装がスタートしました。
◇建具を展示スペースに、縁側をカフェに変える
あらためて見回せば、昔の日本家屋には、いわゆる「壁」がほとんどないことに気づきます。4辺のうち3辺、ときにはすべてが開閉可能な建具。この雰囲気を活かしながらも展示スペースにするために、白く塗装したコンパネを立てることに。日本の誇る“スキマ空間”床の間にもスポットを仕込み展示スペースに。
いまでは珍しい一間幅のある広縁は、全面ガラスの引き戸から陽の光が時間の変化を教えてくれる素敵な空間。ここで坪庭を眺めながら、ゲストにお茶を飲んでいただくことに。期間中に行われるワークショップのスペースとしても活用します。
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