村の中心部に、シュタイナー幼稚園があります。単に音楽や美術のことを指して「芸術」というのではなく「あらゆる事象を、見えるものも見えないものも、人間存在のすべてをもって、芸術的にとらえ、感じること」を教育の場で実践するシュタイナーの思想。日本でも注目されていますが、その多くはカリキュラムの特殊性、指導のテクニックや、教育・発達の理論として、表面を掬ったものになってしまう気がします。というのは、その思想の神髄が、人間存在の全体で「感じる」ことであるなら、いまの日本の住空間、生活環境の中で単に"方法論"として取り入れようとしても、彼の思想を「感じられる」とは思えないからです。いま、秋の陽を浴びてアムゼル村の小路を歩きながらの実感です。
幼稚園の周辺にも、この村らしい様々な施設があります。門の内側、幼稚園と同じ敷地には素朴な手作り風クーヘン(ケーキ)とお茶が美味しいカフェ。金工作家のアトリエらしいガレージや、窓から現代絵画風の大きな描きかけのキャンバスが見える家に続いて、路地の奧には本・画材・雑貨などを扱うお店がありました。
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シュタイナー幼稚園で使われている教材や、有機栽培の綿花で作ったフェルト、手作り風の蝋燭、木の玩具など、見ていて飽きない雑貨屋さん。同じ敷地に小さな本屋さんも併設。 |
店に隣接した納屋を改造したスペースは、ギャラリーにもなる。土壁にストーブ。素朴な木の椅子。なんとも、味のある空間。 |
シュタイナー幼稚園や小学校でも教材として使われている画材たち。
蜜蝋の素朴なロウソクは手作りらしく、なんともいえない不揃いな、暖かみのあるかたちと質感。灯すと、優しい光を放つのだろうか。(じつは、愛嬌あるかたちを崩すのがもったいなくてまだ使っていない)
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美しい青色の幼稚園の門を入ると水場のある広場を抜けて玄関に。日本の幼稚園のようなファンシーさとは無縁だ。けれど、コンクリートの壁に描かれたキャラクターやちょうちょに迎えられるのと、どちらが小さな心には心地よいだろうか。このすぐ横の建物にカフェがある。
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カフェの素朴な漆喰壁には、小さな抽象画(もちろん印刷ではない)、各テーブルには、季節の花。 |