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#1. 「メルキュールの夕べ」について

 パリ、ソルボンヌ大学で美術史を勉強しています山地治世です。これからここで、私がパリで出会ったアーチストやアートスポットをご紹介していきたいとおもいます。

 パリに住む日本人アーチストといえばどのようなイメージを描かれるでしょうか?
羨望?モンマルトルの丘で観光客を相手にしている絵描きのイメージ?それはあまりにもステレオタイプだとしても、確かにパリというところは言い古されたことばで言えば〈芸術の都〉、社会の体制も一般の人々の文化的意識の高さもアーチストが活動する環境は日本に比べれば恵まれているといえるでしょう。しかし言い換えれば、自称アーチストがなんとか食べていける反面、一流になるために世界中から精鋭の集まる過酷な競争の場でもあります。

 私自身、学生時代から写真を撮っていますが、パリに来た当初はしばらく何も撮れませんでした。あまりにも絵になりすぎて、いつもどこかで見たようなもの、または誰かの物まねになってしまってつまらない気がしたからです。つまり自分というものがしっかりしていないと、オリジナリティがないものはたちまちこの〈芸術の都〉に飲み込まれて消えてしまいます。寛大であるがゆえに恐ろしい、それがパリというところだということがなんとなくわかってきました。

 〈メルキュールの夕べ〉はここで20年、30年と活動してきた日本人アーチストたちの勉強会です。彼らはみんな感性や習慣、言葉の違い、また、煩雑極まりない滞在許可や税金の仕組み等、自らの芸術だけの問題だけではないこれらすべてを乗り越えてしっかりとパリに根付き、もちろん日本でも作品を発表し続けています。この会の発起人のひとりで在仏50年の画家、田淵安一の言葉を借りれば、「パリでの長年の仕事を通じて認め合ったものどうしのいささか誇りを秘めた呼びかけに応じて生まれた集まり」なのです。

 海外で暮らすということは、いつも自分が異邦人であることを意識することです。それは時にはハンディー・キャップであり、また、反対にそれが強力な武器にもなります。そして私が一番大切だとおもうのは、「自分が日本人であることを忘れないこと」。これはあたりまえの様で、ここになじめばなじむほど難しい。だからといってジャポニズム的なものでフランス人に受けをねらった、また反対にパリのイメージを日本で売り物にしたような作品は少し安易な気がするし、(これらがすべて悪いわけではないけれど)そのようなものの中には、アーチスト自身の考えや個性が見えないことが多いようにおもいます。

 〈メルキュールの夕べ〉のアーチストたちの作品は、日本人としてパリで生きてきた作家自身の個性の確かな修練と技術に裏付けられた表現です。エコールというのは、同じ様式や思想を持ったアーチスト達を総称する言葉ですが、〈メルキュールの夕べ〉は本当に個人個人がそれぞれ違った視点と方法論を持ち独立している、グループであり、グループではない、少しめずらしいアーチストの会です。2月25日に行われる第4回の集会を前にして、〈メルキュールの夕べ〉の宣言文も発表され、これからどのように発展していくのか、この会の行方が楽しみです。先日開催された彼らの第一回の展覧会を、パリ発「ラール・ジャポネ・コントンポラン」としてご紹介する論評を書きましたので、そちらもあわせて読んでいただければ幸いです。またこのコラムではそれぞれ一人一人のアーチストのインタヴューもお伝えしたいとおもいます。

 

山地治世(Feb.2004)

追伸:〈メルキュールの夕べ〉の発起人の一人である松谷武判さんの個展が、2004年11月7日から12月18日までパリ6区のギスラン・ エタ・ダール画廊で開催されました。また、2005年1月4日から、やはりパリ6区の ウェイラー画廊で第二回〈メルキュールの会〉展覧会『』が 始まりました。この2つの展覧会の模様、またパリの美術館での企画展の情報も追ってこのコラムでご紹介します。

 

このローマ彫刻を思わせるすばらしい美男、誰でしょう? プリンス「モジ」ことモジリアニ。私の住むモンパルナスのカンパーニュ・プルミエール通りで見つけました。
悲劇的な人生で知られる画家も案外こんな普通のセーター姿でこの街を歩いていたのでしょう。

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山地 治世 PROFILE

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